- 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
- 発売日: 2012/04/13
- メディア: DVD
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15歳の時に観て、観終わった後まだ夢を見ているような気分になっているような映画だった。映画館を出た後の現実の光景の白々した光が逆に非現実的だった。
この映画は、「自分の居場所はここではなく、どこか他の場所にあるのかもしれない」ということ、そして「でもだからといって、そこにはもう帰れないのかもしれない、自分は、場違いな場所で生き続けるしかないのかもしれない」というテーマを描いていた。「愛してくれている人は本当は君の事なんて何も理解してなくて、そして、本当に愛していた人達は、もうとっくに死んでしまっているのかもしれない。」、そして、「つまり、君は一人ぼっちで、孤独で、理解不能な有象無象の中で、一人で生きなくちゃならない」という《孤独》についての物語であり、「音楽を作ってみた。死んでしまったかもしれない家族が、ひょっとして聞いてくれるかもしれないから。」という、《表現とは何か》という物語であり、ラスト、「ニュートンさん、飲みすぎですよ」のコメントで終わるこの映画は、《飲酒》についての映画でもあるのだった。
孤独についてこんなに鮮やかに描いた映画を他に知らない。そしてこの頃のボウイは性別を超越した恐るべき美しさを湛えている。とても静かな映画で、観る人を選ぶ映画でもあるが、ボウイの美しさを堪能したいなら一度は鑑賞すべき。また、当初ボウイの主演映画はSF作家ロバート・A・ハインラインの「異星の客」が原作になる筈であった。この小説の主人公もこの当時の異星人としか思えないようなボウイの雰囲気に奇妙にダブっており、ボウイを知る上でのサブテキストとして面白い。
「地球に落ちてきた男」はボウイも気に入ってたのか、この映画のスチールから「スティション・トゥ・スティション」と「ロウ」2枚のアルバムのジャケットが作られている。ボウイはその後も様々な映画に主演・出演しているが、なんかどの映画でも「ゲスト出演/歌手 デビッド・ボウイさん」って感じの出演で、ロックアーチストとして個性が強いと、逆に映画みたいな場所だとイメージが強すぎて映画世界に溶け込んでないんじゃないかと思う。