ネチネチ罵詈雑言

電車に乗り空いた席に座るとすかさず隣に座ってた若造が手のひらの裏でオレを2回ほど軽く叩き何か言っている。「音量落としてもらえますか。」オレは愛機:iPodでガンガンにディスコミュージックを聴いていたが、実は電車の席に付く時、この若造に御注意される一瞬前に音量は最小に落としていたのである。オレだって音漏れで他人サマが御迷惑になるであろう事ぐらい御存知なのである。「音量はたった今落としたとこなんですが?」とオレ。実際もう音なんか全く漏れていないはずだ。若造は暫く戸惑った顔をして「…あ、ありがとうございます」とかなんとかおっしゃられたのであった。よく見るとハンチングにムートン、眼鏡にヒゲ、ビンテージ風のジーンズ、スマートなスニーカーでキメた、見るからに小金持ってて御利巧で御清潔で御洒落でラディカルでリベラルな意識を持ち市民の権利と義務とは何かをよく熟知し品行方正で自らの行動に一点の非があったことさえない善良な日本国民様です、と全身で自己主張しているバカガキのツラであった。若いのに洋服金かかってるな。でもハンチングにヒゲか。お前変態だろ。
そもそもコイツのチェックというか注意が入るのが異常に早かった。もう、電車に乗ってきたオレに眼を付けて、注意したくてたまらなかったのだろう。オレのような「市民のルールとマナーを破る不遜な輩」は徹底的に糾弾し「市民のルールとマナー」に照らし合わせて懺悔させ断罪するのが「善良な市民の義務であり権利」なんだろうからな。「善良な市民のマナー」。ケッ、糞みてえな奴だな。でも悪かったな、貴様が市民の権利をそのブランド物で固めた身に一身に背負いオレを注意した時にはオレは貴様と一緒な善良な市民の務めとしてのマナーをまさに守っていたのだからな。
っていうか、正直な話、お前、単に、自分の正義を振り回す事に酔いたかっただけちゃーうんか?正義はアヘンのように心地良いよな。良識とかモラルとか言う言葉が好きだろ?なあ、白状しろよ、オレを正義の餌食にしたかったんだろ?良識の供物、モラルの贄にしたかったんだろ?ハンチングにヒゲの変態のクセしてな。でもよ、モラルと変態は相反する概念だと思うが違うのか?お前の性的性癖がいかに歪んでいるかオレの知ったことではないが、せめて変態は変態らしくしろよ。
それに、そもそも電車なんざ、オレのような国家の家畜階級が乗る下卑た乗り物だよ。勝ち組の御偉い方は運転手付きの外車にでも乗ったらどうだ?
でなあ、どうでもいいんだが、オレが市民の務めとしてポータブルプレーヤーの音量落としてる横で、お前がお前のツレの広告代理店の垂れ流すCMの犠牲者みてえな哀れなオンナに「会社とは何か」をがなり立ててたのはオレには少し喧しかったんだが。ヘッドホンして音楽聞いてても声が響いて来るんだよ。なあ、善良な市民サマよ、「音量落としてもらえますか?」。