メタルギアソリッド3 スネークイーター (PS2)

METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER

METAL GEAR SOLID 3 SNAKE EATER

期待の新作、ではあるが今頃レビュー。
いやー、初っ端から「監督・小島秀夫」節全開。もう説明過多といっても言いぐらい兵器や銃器のディテール、戦争と平和の○○論、語りまくり。そしてくどい位の演出。スローモーションの多用。オーバーなアクション。懲りすぎのカメラアングル。しかもムービーや台詞があんまり長いもんだから、ゲームが始まってキャラクターを操作できるまでが30分!あれやこれやがあって「本当のオープニングロール」が始まるのがさらに1時間ぐらい後!そもそもこの間プレーヤーはキャラに匍匐前進ぐらいしかさせてない!マップが切り替わればムービー!ムービー!のムービー漬け。
なんじゃあこりゃあ、と思う無かれ。良くも悪くも小島秀夫って、もともと《スナッチャー》の昔からこんなゲームを作る人だった。ゲーム的要素もあるインタラクティブ・ムービー。でも、メタルギアソリッドが《ステルス》っていう要素のせいでゲームの殿堂に入っちゃうぐらい画期的なゲームになっちゃったお陰で、優れたゲーム作家として祭り上げられちゃったけど、本当は押井守並みに「語りたくてしょうがない人」なんじゃないだろうか。
面白いのは語られる物語は物凄くリアリティに満ちてるのに、ゲーム性そのものはあまりリアルに拘ってないんだね。むしろとてもゲームゲームしていたりする。ゲームとして判りやすいの。ソリトンレーダーから外れたら真横にいても気付かない敵とかさ。今回は例えば《迷彩》だの《治療》だの《食料》だのが新機軸として盛り込まれているけれど、ゲームの本質的な部分は変わらない、というか、新機軸の意味があんまり無い、んだよね。目先を変えただけみたいで。いや、実の所《迷彩》、《治療》、《食料》どれも弄くっていて楽しいんだよ!でも例えば昔のゲーム《ダンジョンマスター》がこれらのような要素を入れて、あたかもダンジョンで生活しているかのようなゲーム世界のリアリティを創り出したのとはなんか違うような気がする。
これ、オレはむしろ、小島監督のユーモアなんだと思う。小島秀夫って、ストーリーが重いテーマを扱ってるから、ついついリアル志向のゲーム作家と思い込んでしまっちゃったけど、考えてみれば、ゲーム世界に「Hな雑誌」とか「段ボール箱」とか持ち出したり、ロッカールームはかわい子ちゃんのポスターだらけだったり、妙なユーモア精神があるのね。まあ、実はオレはちょっと勘弁してくれって思うこともあるけど。いや、どっちつかずだからさ。
このMGS3でも、オープニングロールは映画007風なんだよね!今時あの大時代的なオープニングをあえてやるのは、ゲームの世界観がどうとかいう問題じゃなく、「一回やってみたかった!」程度のもんだと思うのよ。セーブの度にオペレーションの女の子から5〜60年代の古き善きB級SF映画の話を聞かされるのも、緊張感を恐ろしく殺ぐんだけども、結構楽しかったりするんだよ。
結局、さっきの押井守じゃないけど、小島のゲームって、「小島節」を堪能するために、「小島世界」を垣間見る為に、まずは存在してるんだよね。これが海外だと映画監督を目指しちゃうゃうんだろうけど、映画産業の感性も資金も極貧の日本では、こんな企画の映画撮れないんだよ。せいぜいアニメだろうな、日本は。だからこそ逆に、そのフラストレーションから小島秀夫は「語っちゃう」のかもしれないね。
いろいろ言ったけど、やっぱりこのゲーム、やりだすと止まらないんだよ。やっぱりストーリーで引っ張って行ってるからね。やっぱり面白いんだよね。