- アーティスト: デヴィッド・ボウイ
- 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
- 発売日: 2009/07/01
- メディア: CD
- 購入: 3人 クリック: 10回
- この商品を含むブログ (18件) を見る
しかしその後2枚目のベストアルバムを製作したあとボウイはヨーロッパに舞い戻る事となる。まだ冷戦の続くこの頃、ボウイはベルリンの壁近くのスタジオでベルリン3部作と呼ばれるアルバムの第1作を製作する。そのアルバムがこの「ロウ」である。
かつてないほどの分厚いシンセサイザー音と内省的で個人的な歌詞。そしてアルバムの殆ど半分がインストゥルメンタルで占められた異例の構成。アルバムジャケットの燃える橙色に染まった背景は、ヨーロッパの黄昏の色であり、どこの国の言葉とも取れないホネティック・ランゲッジとよばれる架空の歌詞で歌われる曲は、様々な国家の混成するこの大陸の、どこでもありどこでもない言語で歌われた歌なのだろう。東西冷戦が未だ永遠に続くかと思われた20世紀末西洋文明の閉塞感と緊張感。それに触発された、ボウイの幻視する西洋文明の終焉を描く音響がこのアルバムである。