ポラロイドを持った紳士

雨降りで思い出すアルバムのもう一つはジャパンの「孤独な影」、原題が「Gentlemen Take Polaroids」。アルバムジャケットが、稲光の射す土砂降りの雨の中を、ボーカルのデヴィッド・シルヴィアンが蒼白の化粧をした顔で傘を差している、といったもの。なぜかこのアルバムジャケットの絵が好きなんですよ。
このアルバムの発売がオレの18の春だった。東京に上京したてのオレは発売されたばかりのソニーウォークマンにこのアルバムを録音したカセットテープを詰め、何処に行くにも聴いていたような気がする。あの頃、東京は雨ばかり降っていた。そもそも上京したその日が雨だった。
凍るような雨にけぶる灰色のコンクリートの街並みとどんよりとした灰色の空。街行く人たちは色彩の無い洋服を着て、雨の中では保護色のように目立たなかった。そしてヨーロッパのインテリジェンスを感じさせるジャパンの憂鬱で冷え冷えとした旋律は、異邦としか思えない見知らぬ街で雨に打たれながらさ迷い歩くオレの心に奇妙に沁みた。
そして、もう20数年も経った今でも、雨降りにはこのアルバムの事を思い出す。アルバムには、坂本龍一が参加している曲もあります。

Gentlemen Take Polaroids

Gentlemen Take Polaroids