SINK/いがらしみきお

http://www.web-sink.com/
いわゆるWeb Bookとして公開されていた いがらしみきお のホラー作品、SINKがやっと完結。
無料で単行本2冊分の純新作マンガをWeb上で公開する事のメリットって何なのだろう、とずっと思ってたんですけどね。小説なんかではあるみたいですが、これはこれでプロモーションになるんでしょうね。
この作品は「ネ暗トピア」で4コママンガのマイルストーンとなり、「ぼのぼの」で動物マンガと哲学マンガの融合を成し遂げた鬼才いがらしの新たな領域。そして蓋を開けてみると“今まで誰も見た事のない異世界の扉を開けてしまった”恐るべきホラー作品に仕上がっていた。最初はゆっくりと、そして次第に雪崩のようにバランスを崩し狂ってゆく日常。何一つ説明されず、何一つ意図の理解できない超現実的な怪異。コンクリート塀にめり込み融合している無数のゴムタイヤの絵は正直寒気がしました。
いがらしみきおの新作が、彼が今まで書いてきたギャグ4コマやほのぼの動物マンガと一見何の関連も無いホラーだったのには、それほど違和感を感じなかった。というのは、彼の作品にはいつも無常感と言うか虚無感のようなものが付きまとっていたからだ。いがらしの描く4コママンガには奇妙に死の場面が多かったし、ほのぼのに見える動物マンガにさえ、達観した悟りの境地は涅槃=死後の世界の安らぎを思わせるものがあったからだ。
そんないがらしの描くホラーマンガには、救いも情けもない。そして不安を小出しにし盛り上げるテクニックには一つも隙がない。読者は作中の誰にも感情移入さえする暇がなく、彼らの日常が崩れ落ちてゆくさまをただじっと読み続けていくしかないのだ。以前、望月峯太郎が「バタアシ金魚」の作風から180度転換した「座敷女」を描いた時の衝撃に似たものを感じた。
なお現在Web上では最終話とその前の話だけが公開されています。1ヶ月位で公開終了だそうです。また、これらを収めた第2巻は12月頃の発売だという事です。第1巻については下記参照。

Sink 1 (バンブー・コミックス)

Sink 1 (バンブー・コミックス)