その1:実家から連絡

木曜の夜、北海道の実家から電話があり、親戚に不幸が出たとの事。母親の兄、オレの伯父が事故死したらしい。オレの伯父は沿岸漁業をやっていたのだが、早朝つぶ貝採りに出かける途中、誤って車ごと海に転落したと言う。享年69歳。金曜日に通夜、土曜日に告別式との事なので出席できるか、ということだった。
オレは親戚付き合いというものが嫌で、というより親戚の存在そのものが嫌いで、こういうものとは殆ど係わる事が無く歳を経てきたが、なんだかこの日、「もうこういうの嫌だとか言ってるの止めようかなあ」と突然思った。それで、出席することにした。結婚してから実家を離れて、5年ほど会ってない妹とも会いたかったし、何しろ、取り合えず、オレの親戚って、今どうなってんの?という単純な興味が沸いたんである。
いや、「理由がどうとかではなく、親戚の冠婚葬祭に出るのは社会人の常識だろ」とおっしゃる方もいると思うし、けだし正論だとは思うが、オレという人間は、どんな理由も自分で思いつかないと動けないたちなのだ。それに、そもそも、オレという人間は、ほとんど常識外の生活をしていたりする。だって、人の頭で考えられた理由で自分が拘束されるのって馬鹿らしいだろ、というのがオレ的な理由。ああお馬鹿な理由だ…。人に不快感や迷惑掛けてるわけじゃないしな。まあ馬鹿にはされるがな。
という訳で、自分なりに一つ“常識”を取り戻したオレは、金曜日の早朝、親戚の家がある北海道の函館へと向かうことにした。