エイリアン9-エミュレイターズ / 富沢 ひとし(著) チャンピオンREDコミックス  ISBN:4253231012

このマンガはよく知らなかったんですが、 日々の凧あげ通信さんのところで触れられていたのでちょっと興味が湧き購入。
小学6年生になると学年から数名の少女が「エイリアン対策係」に任命される。この「エイリアン対策係」とはボウグと呼ばれる生物を頭に載せて共生させ、学校に次々とやってくるエイリアンを捕らえ、倒すとてつもなくハードでデンジャラスな係だった…というのがストーリー。
最初はなぜエイリアンが学校にやってくるのか?何故少女たちはエイリアンを捕らえなければならないのか?が謎のまま語られるが、次第にこれが異星人たちのボディ・スナッチの話であることがわかってくる。
可愛い絵柄とは裏腹の、不気味で寒々としたストーリー展開。少女たちにほとんど自由意志はなく、むしろ思考は蹂躙され、乗っ取られ、洗脳されてゆく。肉体までもがおぞましく変容させられてゆく。そして物語の背後にある、拭いきれない死の匂い。
結論から言うと、実に楽しめた。面白かった。しかし、なにか心に刺のように嫌な物が残る作品だ。エイリアンとの融合による肉体・精神の変容に少女たちはまるで躊躇しないのだ。まるでそれが自明の理であるかのように。
この物語はなんなのだろうか?考えるに、これは性交未経験の少女たちにとってのセックスと己のリビドーとの出会いの物語なのではないか。もちろんエイリアンは性交のメタファーである。最初は気持ち悪がっていたエイリアン=生殖行為も、慣れてくるとそれを当たり前のように受け入れる。精神も肉体も生殖行為を受け入れられるように変容する。だから主人公は少女でなければならなかったのであり、大人たちは皆既にエイリアンと融合していたのである。これは少女たちのイニシェーションの物語ということが出来るのだろう。
ああでも気持ち悪いと言えば気持ち悪い。多分それはオレが(または作者が)少女の本当の肉体性を理解できないからなのではないかと思う。