K嬢のこと

K嬢は身長170cm、体重60kg。胸は青りんごぐらいで、お尻の話はNG、ということになっている。背が高いからスタイルがよく見える。このスタイルなのに大食漢。お昼は弁当を2個たいらげる。洋服はだいたいジーンズ。冬はローゲージのざっくりしたセーター、夏はキャミソールにコットンのシャツ。基本的にカジュアル。丸顔でショートヘア。時々縁無しのオーバルのメガネ。顔は、オレに言わせるとぽっちゃりしたユマ・サーマン。開けっぴろげの大きな二重の眼、負けん気の強そうな鼻、いつも満足してるみたいな口元。最初は自分のプライベートな話しを殆どしてくれなくて、彼女の内面まで辿り着くのに半年掛かった。オレは野生動物の餌付けをしているような気分だった。「感情爆発させやすいんですよ」とか言ってるけど、彼女が感情爆発させてるのは笑い話にゲラゲラ笑ってる時ぐらい。基本的に明るい、というか、時としてアホなんだろうか、と心配になる。猛禽類のことをずっと細菌類だと思っていた。でも人の話をちゃんと聴く。聞き流さない。話をしている時はずーっと相手の目を見ている。オレも彼女と話している時はずーっと見詰め合ってるような気分になった。彼女を好きになるのに時間は掛からなかった。
彼女は空手使いだ。だがお陰で痴漢を気安くぶん殴れなくて、と笑っていた。彼女の好きなことは絵を描くこと、彼女の夢は絵本作家。『ぐりとぐら』みたいな絵本が理想、と彼女。「素敵な絵で子供たちに夢を与えるのかい」と訊くと「そうじゃなくてサザエさんみたいに同じキャラを使い回ししてずっと同じ物を描き続けるの。楽だと思わない?」。彼女の野望はどこかズレている、とオレは思う。でもそれでもいいと思う。彼女があの満腹の猫みたいな笑顔で居てくれるなら。
オレはそんな彼女が大好きだったんだよ。