ブラック・ハウス〈上〉 〈下〉 新潮文庫 スティーヴン・キング/ ピーター・ストラウブ(著), 矢野 浩三郎(翻訳)

ブラック・ハウス〈上〉 (新潮文庫) ブラック・ハウス〈下〉 (新潮文庫)
キングとストラウブ、2大ホラー作家共著によるダーク・ファンタジー。アメリカのある片田舎で連続幼児誘拐殺人事件が発生する。惨たらしい様で屠られた幼児たちの亡骸から精神異常者の犯罪ではないかと推測されるが、一向に犯人は捕まる気配が無い。次第に恐怖に汚染されていく町。しかしそれは現実世界とは別に存在する異世界から、平行し存在する全ての世界全体を混沌に飲み込もうとする邪悪な意思の尖兵の仕業だった…。
導入部の町とそこに住む人たち、そして主要人物たちを描写する筆力には圧倒されます。一見平和な町が気づかぬ内にゆっくりと蝕まれていく。キングの「呪われた町」をちょっと連想しました。ただ今作ではキングはちょっと悪乗りしすぎかも。後半の異世界の描写はちょっとB級テイスト過ぎ。逆に格調高い文章のパートはストラウブが書いたんだろうなあ、と思わせます。ただ人物描写はおそろしく巧みで、魅力的で個性に満ちた登場人物が多数登場するので、このへんは読んでて楽しめました。
スティーブン・キングは昔から好きな作家。出ている訳書は大体読んでます。初期の「ファイアースターター」とか「呪われた町」とか、破滅へとひたすら転げ落ちてゆく呪われた物語は本当に好きでした。中期の作品はテクニックだけで書いてたような部分もありましたが、最近の作ではダークファンタジー寄りの『骨の袋』『不眠症』など、もうキング以外の誰にもかけないだろうと思わせる圧倒的な凄みと暗い輝きに満ちています。なにしろ『骨の袋』は哀惜に満ちた悲劇的でおぞましいラブストーリーだし、『不眠症』は「死とは何か」という命題をホラー作家として正面から描き、そしてそれをあまりにもサイケデリックなビジョンで描写した、キングの新たな到達点とさえ思わせる作品です。ぜひ御一読を。

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