タイトになったことで生まれ変わったテンポの良い良作〜映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』

パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊 (監督:ヨアヒム・ローニング&エスペン・サンドベリ 2017年アメリカ映画)


パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズは他愛ないと言えばそれまでだが老若男女楽しめる優れたエンターティメント冒険ファンタジー作品ということでよろしいのではないかと思う。オレもとりあえず全作観ているが、とりわけ2作目『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』がお気に入りである。以下にこれまでブログで書いた『パイレーツ』シリーズのレビューをリンクしておく。

パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト (監督: ゴア・ヴァービンスキー 2006年 アメリカ) - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド (監督:ゴア・ヴァービンスキー 2007年アメリカ映画) - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ
[MOVIE]映画『パイレーツ・オブ・カリビアン / 生命の泉』はピシャンピシャンキシャーキシャーだったッ?! - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ

とはいえ、3作目以降はどうにも迷走していて手放しで楽しめなかった部分が多々あるのは確かだ。3作目は監督ゴア・ヴァービンスキーの作家性を打ち出し過ぎて娯楽作として不透明になった事、4作目以降は興行成績を高めようとしたのかシナリオを盛り込み過ぎてテンポが悪くなってしまったことなどなどが原因のような気がする。

そんな『パイレーツ』シリーズの最新作『最後の海賊』を観た。前作までがなにしろグダグダだった為、あまり食指が動かず、殆ど期待せず劇場に足を運んだのだが、あにはからんや、これがそこそこに面白い作品だった。『パイレーツ』シリーズもまだまだ終わっていないな、という気にさせられた。

今回の物語はシリーズの中でも相当シンプルである。3作目で呪いをかけられ幽霊船の船長となってしまったウィル・ターナーオーランド・ブルーム)の呪いを解くため、成長した彼の息子ヘンリー(ブレントン・スウェイツ)が、伝説のアイテム「ポセイドンの槍」の在り処を求め探索することになる。そしてそのカギを握るのが例によって我らが海賊船長ジャック・スパロウだった(ジョニー・デップ)、という訳である。これに女性天文学者カリーナ(カヤ・スコデラリオ)、「海の死神」サラザールハビエル・バルデム)、ジャックの宿敵バルボッサ(ジェフリー・ラッシュ)が絡んでゆき、ドラマを形作ってゆく。

物語は冒頭こそジャックとその仲間たちの金庫破りを巡る派手なドタバタが展開し、この辺りは従来通りの『パイレーツ』だな、という気がする。コメディ要素たっぷりのこのドタバタは泥臭くまるでドリフのコントを見せられているようで、安定した楽しさはあるが新味には欠ける。しかし「旅の仲間」たちが集結しいよいよ「ポセイドンの槍」探索が始まると、これが実にテンポよく物語が進んでゆく。

このテンポの良さは前作までのゴチャゴチャと盛り込み過ぎのシナリオへの反省があったのかもしれない。なにしろこの『最後の海賊』、シリーズで最も上映時間が短いいのだ。これまでのシリーズでは1作目『呪われた海賊たち』が143分、2作目『デッドマンズ・チェスト』が150分、3作目『ワールド・エンド』が169分、4作目『生命の泉』が141分という結構な長尺だったものが、5作目であるこの『最後の海賊』は129分となっているのだ。シナリオのシンプルさと併せ見せ場も整理されそのせいでタイトな上映時間となっているのだ。まあこれにはこれまでよりも抑えられた製作費にも要因があるだろう。

反面、タイトさを意識し過ぎたのか演出がぶっきらぼうで、場面によっては端折り過ぎではないかと思えた部分もあった。そこは見せてもいいだろうという場面が省略されていたりするのだ。また、ジャックやヘンリー、カリーナがしょっちゅうマストに縛られていて、この辺の演出の拙さが妙に気になりもした。この辺りは今作を手掛けたヨアヒム・ローニング&エスペン・サンドベリ監督のハリウッド大作への経験値の問題なのかもしれない。

だが、作品が若干小振りになったことによる物語の明快さは、これまでのシリーズに抱えていた欲求不満を十分に払拭するものであったことは確かだ。そもそも、3作目で呪いをかけられたウィルの救済という物語は、本来4作目で語られるべきものではなかったのか。シリーズ中最も哀惜に満ちたこのエピソードの顛末をようやく目にすることができるというというのはファンにとって非常に興味をそそられるものであり、その分物語への吸引力も高まっているのだ。そのラストは想像通りとは言え、カリーナにまつわる想像し得なかったもうひとつのドラマが物語られていることにより、非常に余韻の残るクライマックスを導き出すことに成功しているのだ。

ビッグバジェットの超大作を意識するあまり肥大し過ぎたシナリオをもう一度整理することによって生み出されたこの小気味よさは、"そこそこに大作"であるフットワークの軽さを生み出しており、今後も展開するらしいシリーズへの期待を改めて取り戻すことが出来た。そういった部分でこの『最後の海賊』、オレにとっては非常に好印象の作品だった。