『オースティン・パワーズ』シリーズのジェイ・ローチ監督、『ボラット』、『ブルーノ』のサシャ・バロン・コーエン製作総指揮、アホアホ映画『奇人たちの晩餐会 USA』

奇人たちの晩餐会 USA (監督:ジェイ・ローチ 2010年アメリカ映画)

映画が始まって画面に映し出されるのは衣装を着てポーズをとる小さなネズミたち。彼らは手作りのセットの中に収められ、なにかの物語の一齣を演じているよう。そんな精巧に作られたネズミたちの小さな舞台が次々と映し出されてゆきます。しかしこのネズミは人形?それとも?映画『奇人たちの晩餐会 USA』、タイトルからなんとなくえげつない変態映画を思い浮かべてしまうんですが、実はこんな可愛らしいショットから始まるんですね。

物語の主人公は投資会社社員ティム。彼はあるきっかけから社長に注目され、重役だけがメンバーの秘密晩餐会に招待されるところから始まるんです。しかしその晩餐会とは、重役同士がおかしな連中を掻き集め、そいつらがいかに変わってるかを競わせながら陰で嘲笑する、という趣味の悪いもの。けれど出世したいティムはその晩餐会に出席するために、「奇特なアホ」を探すことになるんです。そんな彼が出会ったのが死んだネズミを剥製にして衣装を着せ、ドールハウスや箱庭を作っていた男バリー。そう、冒頭のネズミ・ジオラマはこの彼が作っていたものなんですね。ティムはバリーを晩餐会に出席させる為に口説きますが、このバリー、かなり頓珍漢な性格で、お陰でティムはしっちゃかめっちゃか。おまけにティムの恋人ジュリーは「出世のために人を笑いものにするなんて許せない」とか言って怪しげな芸術家の元に行っちゃうし、ティムの邪悪な元カノがティムをストーカーしているし、話はどんどん雲行きが怪しくなってゆきます。

監督がいいですよねえ。『オースティン・パワーズ』シリーズ(モージョー!)のジェイ・ローチ監督ですよ(そうはいいつつ『ミート・ザ・ペアレンツ』シリーズはちゃんと観ていないんだが)。そして「お下劣ならオレに任せろ!」なサイテー野郎、『ボラット』、『ブルーノ』のサシャ・バロン・コーエン製作総指揮!これは大いに期待しちゃいますが、お下劣映画って訳じゃあありません。この映画『奇人たちの晩餐会 USA』はフランシス・ヴェベール監督による1998年のフレンチ・コメディ『奇人たちの晩餐会』のリメイクなんですね。こちらのオリジナルは観ていないんですけどね。このリメイク版、アメリカでは結構ヒットしたんですが、USコメディの受けない日本では例によってDVDスルー、まあ確かに誰もが腹を抱えてゲラゲラ笑える作品というわけではないですが、コメディ好きには要チェックの配役になっておりますよ。

主人公ティムを演じるのは『40歳の童貞男』をはじめ『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』、『寝取られ男のラブ♂バカンス』とコメディ映画の常連となっている(らしい)ポール・ラッドなんですが、"らしい"と書いたのはこれらの映画全部観てるのになんか印象に無くて…しかも最初"ポール・ラッド"と聞いて「ポール・ポッツってコメディ俳優だったっけ?」などと戯けきった勘違いまでしていました…いろいろスイマセン…。その彼を引っ掻き回す"ネズミ剥製オタク"ことバリーを演じるのはあのスティーブ・カレル。今回は髪をちょっと染めてイメージチェンジ、そのせいか素っ頓狂なギャグに磨きがかかって見えたな!さらにこのバリーの上司であり敵役を演じるのが『ハングオーバー!』、『デュー・デート』でイラつくデブを怪演してくれたザック・ガリフィナーキス!今回はモジャモジャヘアーをなんだか七三に分けてある意味さらに怪しさ倍増、眉間に皺寄せまくりながら訳の分からないことをほざきまくり、周囲をまたもや鬱陶しさのズンドコへと陥れます!

しかもそれだけじゃない!胡散臭さ満載のスイスの富豪役、あれっ?こいつどっかで見たような…と思って調べたらなんとなーんとイギリスの強烈お馬鹿番組『リトル・ブリテン』の”背の高いほうのバカ”ことデヴィッド・ウォリアムズじゃあないですか!こんな所でデヴィッド・ウォリアムズに会えるとは本当に嬉しい!ってか『リトル・ブリテンUSA』早く日本語版DVD出せ!(『リトル・ブリテン』についてはこちらで書いたことがあるのでよかったらお読み下さい。動画も貼ったからヤツのしょうもないギャグが堪能できるよ!)他にもティムを追い掛け回すブチキレストーカー女ダーラに『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』にも出演していたイギリス女優ルーシー・パンチ。あとエキセントリックすぎる芸術家をケツまで出して熱演していたのがジェマイン・クレメント。この人の出演作は観た事が無かったんですが、可笑しくて俄然興味が湧いてきた。『Mr.ゴールデン・ボール/史上最低の盗作ウォーズ』という作品があるようです。とまあこんな具合にいろんなコメディ俳優で脇も固めまくりなんですよ!

こんな彼らが怪しげな笑いを披露しながらも、物語はラブロマンスとペーソスを効かせながら物語は進んでゆきます。バリーがネズミ・ジオラマを作っていたのには実は訳が…という部分が泣かせてくれます。クライマックスはタイトル通り"奇人"なみなさんが集まりますが、いってみればユニークな趣味の人たちでしかなくて、とんでもない変態が集まるというわけでもありません。だからそっちのほうを期待される方にはちょっと物足りないかもしれませんね。そしてラストはハートウォーミングに落とし、良質なコメディ映画に仕上がっていましたよ。


奇人たちの晩餐会 リマスター版 [DVD]

奇人たちの晩餐会 リマスター版 [DVD]

bruno 完全ノーカット豪華版 [DVD]

bruno 完全ノーカット豪華版 [DVD]