生身の人間使って戦争ゲームだ!〜映画『GAMER:ゲーマー』

GAMER:ゲーマー (監督:ネヴェルダイン/テイラー 2009年アメリカ映画)


腕は相当ヌルイにもかかわらずゲームは好きだ。それもファースト・パーソン・シューティング(FPS)と呼ばれるジャンルのゲームが好きだ。思えばパソコン・ゲーム『QUAKE II』と『UNREAL』に出会ってからゲームと言えばFPSばかりやっているような気がする。よく「ブチ殺しまくりゲーム」なんて自分では言ってるが、オレが真にFPSが好きな理由は、どこまでもリアルに構築された別世界、または現実世界のビジュアルの中を駆け巡ることの快感にあるのだ。あたかももうひとつの現実のような世界に入り込み、そこで息をし世界の光景に見とれスリリングな体験をすることが好きなのだ。そこがどんな血なまぐさい戦場であろうと、不気味な異世界であろうと、そこでは全ての光景が新鮮だ。

映画『GAMER:ゲーマー』はこのFPSゲームを、パソコン上の仮想キャラと仮想現実ではなく生身の人間を現実の世界で操作して戦わせるのが一つの娯楽となった未来の物語である。戦うのは死刑囚同士、彼らは脳髄に人間を遠隔操作可能にするナノマシンを注入され自由意志を奪われ、モニターの向こうの他人に操作されて戦うのだ。実物の銃と実物の弾薬で戦う彼らは撃たれれば傷つき血を流し死んでゆく。文字通りリアルな戦いと死を観戦できるデス・ゲーム、それが『GAMER:ゲーマー』の世界なのだ。主人公はこのゲーム「スレイヤー」で連戦連勝を続ける死刑囚ケーブル、彼はあと数回勝てば自由を勝ち取れる筈だったが、このゲームを開発し運営する科学者ケン・キャッスルとその企業は彼を生かしておくつもりはなかった。そんなケーブルに地下組織ヒューマンズが接触し、彼を脱獄させようと画策するのだが…。

前半の戦争ゲームシーンはさすがに面白い。大義名分もなく善も悪もなくただ勝ち残る為だけにスポーツのように銃を撃ちあい殺しあう死刑囚たち、という光景は実に無機質で殺伐としている。この殺伐感がとてもゲームをプレイしている感覚に近いのだ。物語的には『バトルランナー』や『デスレース』そっくりの設定で、途中まで同じような展開だったから多少気になったが、「生身の人間を遠隔操作するゲーム」が人気を博すグロテスクな世界観がこの映画を独特なものにしている。この映画にはもうひとつ、「ソサエティ」という名のゲームも存在し、それは言ってみればゲーム「シムピープル」や「セカンドライフ」を生身の人間を遠隔操作してプレイできるようなゲームなのだが、やはり「スレイヤー」のように人の人格を奪って運営されている非人間的なゲームなのだ。ただ現実的に見るとどちらもゲームとしてはコストが高すぎるだろうなあ。死刑囚だって無尽蔵じゃないんだし。

後半は主人公ケーブルがこれらのゲームを開発し億万長者となった科学者キャッスルの野望を打ち砕く戦いを主軸として描かれる。「スレイヤー」世界を脱出したケーブルが、妻を救出する為「ソサエティ」世界に入り込むのだが、ここでも遠隔操作された人間たちがキャッスルの追っ手が放った銃弾により人形のようにバタバタと撃ち殺されてゆく様が不気味かつ無機質で面白い。未来社会のデステックなロケーションやいかにも最先端といったコンピューターGUIのビジュアルも目新しさは無いがSF映画の雰囲気を十分に伝えている。監督ネヴェルダイン/テイラーはオレの超大好きな大バカ映画『アドレナリン』シリーズの監督で、コミック乗りのイッちゃってる世界観、カチャカチャと目まぐるしく編集された映像の生むスピード感とチープな味わいといった点はこの『GAMER:ゲーマー』も共通している。

しかもこの映画、配役がなかなかにシブイ。まず主演のケーブルが『300(スリーハンドレッド)』のジェラルド・バトラー。ケーブルを操る青年ゲーマーに『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』のローガン・ラーマンレジスタンス・メンバーに『スペル』の主演女優アリソン・ローマン。ケーブルの刑務所仲間にジョン・レグイザモ。ケーブルの命を狙うのが『エクスペンダブルズ』の黒人俳優テリー・クルーズ。そしてケーブルと共に戦闘ゲームで戦うのが『デス・プルーフinグラインドハウス』のゾーイ・ベル。なんかもうオレの好きそうな映画の主演・出演者ばかりではないか。映画『GAMER:ゲーマー』は決してパーフェクトな映画とはいえないが、サイバー感覚溢れるB級SFの一作としてSFファン、ゲームファンは記憶に留めておいてもいい映画だと思う。

■GAMER 予告編