人にはススメられない仕事 / ジョー・R・ランズデール

人にはススメられない仕事 (角川文庫)

人にはススメられない仕事 (角川文庫)

アメリカ南部のド田舎を舞台に、落ちこぼれ白人ハップとゲイ黒人レナードの凸凹コンビが、悪党相手に大立ち回りを演じるという愉快なシリーズの中の1作。貧乏白人こええよ!アメリカのド田舎は無法地帯だよ!という世界で、やさぐれダメ野郎のくせに何故かやたらタフなハッブと、ゲイのくせに男気溢れるレナードが、減らず口とシモネタを3行に1回ブチかましながら血腥く陰惨な暴力事件に巻き込まれてはボコボコにしてやりかえすといったストーリーである。
ジョー・R・ランズデールの描くこのシリーズは以前『罪深き誘惑のマンボ』を読んでかなり面白かったんでまた手にしてみようと思った次第。なにしろ主人公二人の下品な掛け合いが楽しい。もしオレが小説なんかを書く事が出来るなら、ジョー・R・ランズデールみたいな小説を書きたいとさえ思った。
今回の物語はハップが彼のガールフレンドの売春婦に身をやつした娘を足抜けさせようと大奮闘するといった内容である。しかし相手は凶悪なギャング集団、簡単に足抜けなんぞさせてくれはしない。そこでハップとレナードは拳銃・ライフル・ショットガンで完全武装、戦争でもおっぱじめるような気合で悪党どもの根城に乗り込んでゆくが…。
まあストーリー自体は単純だけど、主人公ハップとレナードのみならず、敵役も一癖も二癖もある怪しさといかがわしさに満ち満ちており、彼らが丁々発止のやり取りをするさまがなにしろ面白い。よくもまあこれだけダメでカスで下品でクソな連中を生き生きと描けるものだ。心情的にダメでカスで下品でクソに限りなく近いオレとしては物凄くシンパシーを感じる。シリーズは何作か出ているのでちょびちょび読んでいきたいな。

モンスター・ドライヴイン / ジョー・R・ランズデール

モンスター・ドライヴイン (創元SF文庫)

モンスター・ドライヴイン (創元SF文庫)

ジョー・R・ランズデールのスラップスティック青春SFホラー。B級ホラー映画オールナイトをやっているドライブインシアターが突然異空間に飲み込まれ、数千人の観客全員がそこに閉じ込められてしまう。逃げ場の無いドライブインでは延々とB級ホラーが上演され、昼夜も時間の流れも判別しない異空間の中、人々は次第に狂気に囚われ、殺戮と食人行為が横行し始める…。『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』やら『死霊のはらわた』やらのB級ホラー映画をやっている劇場で、マンマB級ホラー的状況に陥ってしまうというB級ホラー小説。
映画といえばポップコーンということなのか、電撃に撃たれた二人の人間とポップコーン用紙バケツが合体したポップコーン・キングなんていうモンスターが現れたりして、もう悪ノリもいいところ。基本は食料が無くなることによるパニックと絶望と殺し合いがメインで、異空間やポップコーン・キングみたいな超常現象的なことはあまり起こらないのだが、この辺の悪趣味さやサディスティックさ、物語の救いようの無さ、そして感情移入しやすい登場人物の描き方はS・キング小説と実に近いものを感じた。

ニッポン昔話 下巻 / 花輪和一

ニッポン昔話  下巻 (ビッグコミックススペシャル)

ニッポン昔話 下巻 (ビッグコミックススペシャル)

以前ここで紹介した花輪和一版日本昔話、下巻登場。今回も「鶴の恩返し」「カチカチ山」「花咲か爺」「桃太郎」などのお馴染みの昔話を、花輪流の因果と猟奇とニヒリズムに満ち満ちたオドロオドロしくもまたエグさ100%の作話で展開させています。その結果「鶴の恩返し」は蛇男やかさ地蔵の物語がミックスしたニューストーリーとなり、「カチカチ山」は山岳信仰の物語で、「花咲か爺」「コブとり爺」は超能力宇宙人が登場し、「桃太郎」は"下層階級者"桃太郎と"まつろわぬ民"鬼ヶ島の鬼が因業な長者にレジスタンスを挑むお話になり、「猿蟹合戦」ではリアルな絵で描かれた猿や蟹や臼や蜂が本当に合戦を繰り広げてしまう、というとんでもないことになっています。ラストの「ニッポン現代話」はつちのこを追う父娘が例によっておぞましい事態に落ちて行く、というエゲツない話。

ベルセルク(34) / 三浦建太郎

ベルセルク 34 (ジェッツコミックス)

ベルセルク 34 (ジェッツコミックス)

怪獣大戦争(笑)。文字通り"天を衝くような"大怪獣が暴れまわりますが「こんなのどうすんの?」と思っててもちゃんと収まるのが三浦建太郎の凄いところ。しかし日本人ってファンタジー作ってもやっぱり特撮怪獣のDNAは拭えないんだろうなあ。いやこれはこれで全然OKです。それにしてもあのラストってデビルマンのクライマックスだしAKIRAの覚醒だしサードインパクトだしその結果現世と幽界が交じり合っちゃう新世界が出来上がっちゃうし、もうここまで大風呂敷広げてこれもちゃんと収めてくれるのだろうか、そしてちゃんと完結するのだろうかベルセルク