バットマン ビギンズ

この映画ノーチェックで、最初はあんまり観に行くつもりは無かったんですね。なんか地味っぽいし、「なんで今頃またバットマン?」と思ってたんですよ。ただ、アメリカンコミック・アーチストの巨匠、フランク・ミラーの原作を当初映画化しようとしていたものがこの「バットマン ビギンズ」だという事を公開されてから知ったから突然観に行こうと思い立ったんですよ。
フランク・ミラーは最近ではオレ的におおいに盛り上がっている映画「シン・シティ」の原作者であり製作でもあるんだ。また、このバットマンでもコミックを描いており、さらに物語の核ともなる部分、ブルース・ウェインの幼少時のトラウマ、「なぜバットマンはコウモリを自らの姿に選んだのか?」というエピソードを最初に描いた人でもあるらしい。
なにしろ予備知識無く観たもんだから、結構有名俳優で脇を固めていたことでびっくりしました。渡辺謙は知ってたけど、リーアム・ニーソンマイケル・ケインモーガン・フリーマン、とそうそうたるメンツじゃないですか。そして地味だが頼れる巡査長役がゲーリー・オールドマンだなんて最後まで気付きませんでした…。(ああ不勉強。)でも主役のヒーロー、ヒロインにはあまり魅力感じなかったな。
今回のバットマンは徹頭徹尾リアルであること、現実の人間がコスプレしてヒーローになるためにはどういうことが必要か?を描いていくんだけど、う〜ん、それは映像としてみてもあまり楽しくないんだよな。屋根から落っこちるバットマンとかさ。やはり後半のお膳立てが全て揃って宙を舞うバットマン、スーパーヒーローのバットマンが、やっぱり格好良いんだよ。
テイム・バートン版のバットマンはマイノリティがフリークスとなって社会に復讐する、というバートンらしい作風だったし、対するジョエル・シューマッカーのバットマンは、オレは気付かなかったけど、ゲイでもある監督によるドラッグクイーン的な極彩色のコスプレショウってことなのらしい。どちらもオレは好きだったけどね。
じゃあ今回のバットマンはなんなんだろう?今回は「バットマンだけでは社会を良くすることは出来ない、バットマンはひとつの正義の象徴として人々を先導するものであればいい」というような、ヒーロー=万能をどこかで放棄したような言葉が繰り返し語られる。
リアルなものを追い求めると、リアルな悪も描かなければならない。そして今回の敵役はカルトでありテロリストなんだね。つまり個人が獅子奮迅しても戦いに勝つことは出来ない。そしてクライマックスは街があたかも「ダイハード」みたいな状態になる。しかしこれをいわゆる「911以降のアメリカ」と簡単に言い切っちゃうのもなんなんだよね。むしろ関係ない。
だからこれは余談なんだけど、実はアメコミヒーロー物のコミックの「911以降」の苦悩、というのは確かに存在していて、現実に「グラウンド・ゼロの瓦礫の前でなすすべも無く立ち尽くすスパイダーマン」なんてコミックは存在したし、夢のようなヒーローではなく、あの事件で奮戦した消防署員を主人公にしたアメコミなんかもあったのよ。つまり「無敵のヒーローの現実への無効性」というジレンマが、アメコミの世界にはあることはあった。
現実でもより凶悪で大規模になってきた犯罪・テロリズムというものがあって、それに対してかつてのヒーローは何が出来るか、どのように戦うのか?というのが今回のバットマンだったんじゃないんだろうか。バットマンの原作が醸し出すダークな雰囲気はリアルであろうとすればするほど現実のダークな大量破壊と結びついた、ってことなんじゃないのかな。
しかしいろいろ書いたけど、実際の所今回の主役は新バットモービルで決まりでしょう!あれ車じゃないんだもん。戦車っすよ戦車!パトカーというパトカーを蹴散らし、家々の屋根から屋根へバウンドしながら飛ぶ様には拍手喝采でしたよ!ああ、フィギュア欲しい…。(結局それかよ。)