BOOK

悲しみの段階〜ジュリアン・バーンズ 『人生の段階』

■人生の段階 / ジュリアン・バーンズ 誰かが死んだことは、その存在が消えることまでは意味しない――。最愛の妻を亡くした作家の思索と回想。気球乗りは空の高みを目指す。恋人たちは地上で愛しあう。そして、ひとつに結ばれた二人が一人になったとき、遺され…

カート・ヴォネガットの『人みな眠りて』を読んだ

■人みな眠りて / カート・ヴォネガット カート・ヴォネガットの没後10年だという。ヴォネガットの死に際してはこのブログに弔辞めいたものを書いたことがあるので(カート・ヴォネガット氏死去 - メモリの藻屑、記憶領域のゴミ)、そうか、このブログ自体もう1…

最近読んだ本〜『書楼弔堂 破暁』

■書楼弔堂 破暁 / 京極夏彦 明治二十年代の半ば。雑木林と荒れ地ばかりの東京の外れで日々無為に過ごしていた高遠は、異様な書舗と巡りあう。本は墓のようなものだという主人が営む店の名は、書楼弔堂。古今東西の書物が集められたその店を、最後の浮世絵師…

ケン・リュウ小説の進化形〜短編集『母の記憶に』

■母の記憶に / ケン・リュウ 不治の病を宣告された母は、誰より愛するひとり娘を見守り続けるためにある選択をする。それはとてつもなく残酷で、愛に満ちた決断だった…母と娘のかけがえのない絆を描いた表題作、帝国陸軍の命で恐るべき巨大熊を捕らえるため…

最近読んだ本〜『終わりなき戦火 老人と宇宙6』

■終わりなき戦火 老人と宇宙6 / ジョン・スコルジー 元プログラマの操縦士レイフは、気がつくと脳だけの姿で宇宙船につながれ、コロニー連合への兵器にされていた。レイフはその元凶の謎の組織“均衡”に、決死の反撃を試みるが…。そのころエイリアンとの外交…

カピが可愛いいしいひろしの絵本『たべてみたい!』

■たべてみたい! / いしいひろし いしいひろしさんが描いた絵本『たべてみたい!』は3歳以上推薦です。 これを読んだオレは3歳以上なので全然問題ありません。 『たべてみたい!』は表紙絵から分かるようにカピバラが主人公となります。 3歳以上推薦の絵本を…

最近読んだ本〜『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』『破壊された男』

■とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 ---ジョイス・キャロル・オーツ傑作選 とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢 ---ジョイス・キャロル・オーツ傑作選作者: ジョイス・キャロル・オーツ,栩木玲子出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/02/15…

最近読んだSF小説〜『宇宙探偵マグナス・リドルフ』『伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ』

■宇宙探偵マグナス・リドルフ / ジャック・ヴァンス 宇宙探偵マグナス・リドルフ (ジャック・ヴァンス・トレジャリー)作者: ジャックヴァンス,Jack Vance,浅倉久志,酒井昭伸出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2016/06/24メディア: 単行本この商品を含むブ…

最近読んだSF小説〜『ヒュレーの海』『ゴッド・ガン』

■ヒュレーの海 / 黒石迩守 ヒュレーの海 (ハヤカワ文庫JA)作者: 黒石迩守,Jakub Rozalski出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2016/11/22メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る “混沌”が地表を覆って世界が崩壊し、地球が巨大な記録媒体“地球の記録…

今年面白かった本やらコミックやらゲームやら

■今年面白かった本 ○千の顔をもつ英雄〔新訳版〕(上)(下) / ジョーゼフ・キャンベル 千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)作者: ジョーゼフ・キャンベル,倉田真木,斎藤静代,関根光宏出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/12/18…

百鬼が夜行しさあタイヘン!?〜『虚実(うそまこと)妖怪百物語』

■虚実(うそまこと)妖怪百物語 (序)(破)(急) / 京極夏彦 シリアの砂漠に現れた男。旧日本兵の軍服に、五芒星が染め付けられた白手袋。その男は、呪術と魔術を極めた魔人・加藤保憲に似ているように見えた。妖怪専門誌『怪』の編集長と共に水木プロを訪れた…

真正さの為の戦い〜ジョン・ル・カレ『繊細な真実』

極秘の対テロ作戦に参加することになったベテラン外務省職員。新任大臣の命令だが、不審な点は尽きない。やがて、作戦は成功したとだけ告げられ、任を解かれる。一方、大臣の秘書官トビー・ベルは上司の行動を監視していた。作戦の背後に怪しい民間防衛企業…

大日本帝国軍アメリカ征服!巨大ロボット出撃!オタクネタ満載!〜『ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン』

■ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン / ピーター・トライアス 第二次大戦で日独の枢軸側が勝利し、アメリカ西海岸は日本の統治下にある世界。巨大ロボット兵器「メカ」が闊歩するこの日本合衆国で、情報統制を担当する帝国陸軍検閲局勤務の石村紅功(い…

地獄のメキシコ麻薬戦争を描く『犬の力』続編小説『ザ・カルテル』

■ザ・カルテル(上)(下) / ドン・ウィンズロウ 麻薬王アダン・バレーラが脱獄した。30年にわたる血と暴力の果てにもぎとった静寂も束の間、身を潜めるDEA捜査官アート・ケラーの首には法外な賞金が賭けられた。玉座に返り咲いた麻薬王は、血なまぐさい抗争を…

今度のスティーヴン・キングはミステリーに挑戦だ!『ミスター・メルセデス』

■ミスター・メルセデス / スティーヴン・キング スティーヴン・キングが2014年に発表した『ミスター・メルセデス』が翻訳されて、一介のキング・ファンとしてはとりあえず読まねばなるまい、と例によって分厚い上下巻をドーンとまとめて買ったのである。いや…

バンクシー出没にニューヨークは大騒ぎ〜『BANKSY IN NEW YORK バンクシー・イン・ニューヨーク』

随分前からゲージツには興味が無くなってしまったし、美術館にも行かなくなった。オレのさもしい日常に、ゲージツやら美術館やらがなんだかそぐわなく思えてきたのだ。そんな中バンクシーはいまだ好きなアーチストなんだと思う。洋書屋で(まあ、こういう所…

ジュノ・ディアスの『ハイウェイとゴミ溜め』を読んだ

ドミニカの田舎での退屈な夏休み。伝説のマスク怪人を追うボクとアニキの冒険「イスラエル」。キレた女の子オーロラがボクに求めたものはドラッグだったのかセックスだったのか、それとも…。N.Y.の路上に生まれたラブ・ストーリー「オーロラ」。魔術的リアリ…

アリス・マンローの短編集『イラクサ』を読んだ

旅仕事の父に伴われてやってきた少年と、ある町の少女との特別な絆。30年後に再会した二人が背負う、人生の苦さと思い出の甘やかさ(「イラクサ」)。孤独な未婚の家政婦が少女たちの偽のラブレターにひっかかるが、それが思わぬ顛末となる「恋占い」。そのほ…

『マヌ法典―ヒンドゥー教世界の原型』を読んだ

■マヌ法典―ヒンドゥー教世界の原型 / 渡瀬信之 多民族、多言語、多宗教の国インドでは、今日ヒンドゥー教徒が総人口の8割をしめ、かれらは文化、政治、経済に圧倒的な力を及ぼす。ヒンドゥー教は信仰と生活実践を一体化した宗教で、特有の社会制度、法律、倫…

インド好きにもインドを知らない方にもお勧めしたいインド本『インド人の謎』

■インド人の謎 / 拓徹 インド滞在12年――気鋭の研究者が、インドの「謎」を解く! 神秘、混沌、群衆……インドにはとかく謎めいたイメージがつきまといます。こうしたイメージは、興味をかき立てるだけでなく、往々にして私たちとインドとの心理的な距離を拡げて…

『蒲公英(ダンデライオン)王朝記 巻ノ二: 囚われの王狼』を読んだ

■蒲公英(ダンデライオン)王朝記 巻ノ二: 囚われの王狼 / ケン・リュウ 人を惹きつけてやまない天性の魅力をもったクニ・ガルと、皆殺しにされた一族の復讐を胸に生きる男マタ・ジンドゥ。ザナ帝国打倒の旗印のもと、ふたりは永遠の友情を誓ったはずだった―。…

一人の口上師の死を巡るスラップスティック〜『素晴らしきソリボ』

■素晴らしきソリボ / パトリック・シャモワゾー 誰がソリボを殺したか?クレオール作家の画期的小説!!カーニバルの夜、語り部ソリボは言葉に喉を掻き裂かれて死ぬ──クンデラに「ボッカッチョやラブレーにつづく口承文学と記述文学の出会い」と激賞された、ク…

インドとアメリカを舞台にしたある家族の破綻と再生の物語〜『低地』 ジュンパ・ラヒリ

カルカッタ郊外に育った仲睦まじい年子の兄弟。だが過激な革命運動に身を投じた弟は、両親と身重の妻の眼前、自宅近くの低湿地で射殺される。報せを聞いて留学先のアメリカからもどった兄は、遺された妻をカルカッタから連れだすことを決意する。喪失を抱え…

雪に閉ざされたトルコの街で起こった反イスラム主義クーデターの顛末〜『雪』

■雪 / オルハン・パムク 十二年ぶりに故郷トルコに戻った詩人Kaは、少女の連続自殺について記事を書くために地方都市カルスへ旅することになる。憧れの美女イペキ、近く実施される市長選挙に立候補しているその元夫、カリスマ的な魅力を持つイスラム主義者“…

岸本佐知子翻訳・編集による不思議で不気味で素晴らしい現代アメリカ文学短編集『楽しい夜』

■楽しい夜 / 岸本佐知子・編 メキシコの空港での姉妹の再会を異様な迫力で描いた、没後十余年を経て再注目の作家による「火事」(ルシア・ベルリン)、一家に起きた不気味な出来事を描く「家族」(ブレット・ロット)。アリの巣を体内に持つ女という思い切り変な…

台湾の作家・呉明益による短編集『歩道橋の魔術師』を読んだ。

■歩道橋の魔術師 / 呉明益 1979年、台北。西門町と台北駅の間、幹線道路にそって壁のように立ち並ぶ「中華商場」。物売りが立つ商場の歩道橋には、子供たちに不思議なマジックを披露する「魔術師」がいた――。現代台湾文学を牽引し、国外での評価も高まりつつ…

『紙の動物園』ケン・リュウによるシルクパンク・エピック・ファンタジイ巨編『蒲公英(ダンデライオン)王朝記』開幕開幕〜!

■蒲公英(ダンデライオン)王朝記 巻ノ一: 諸王の誉れ / ケン・リュウ ■『紙の動物園』ケン・リュウの初長編作 七つの国々からなるダラ諸島では、統一戦争に勝利したザナ国が他の六カ国を支配し、皇帝マビデレが圧政を敷いていた。喧嘩っ早いが陽気で誰からも…

ラテンアメリカのポスト・モダニズム〜『夜、僕らは輪になって歩く』

■夜、僕らは輪になって歩く / ダニエル・アラルコン 内戦終結後、出所した劇作家を迎えて十数年ぶりに再結成された小劇団は、山あいの町をまわる公演旅行に出発する。しかし、役者たちの胸にくすぶる失われた家族、叶わぬ夢、愛しい人をめぐる痛みの記憶は、…

マヌエル・ゴンザレスの奇想小説集『ミニチュアの妻』を読んだ

■ミニチュアの妻 / マヌエル・ゴンザレス 飛行機のハイジャック、ゾンビといった21世紀的モチーフのみならず、ページをめくる度に予測不可能な設定が飛び出す、「ポスト・アメリカ」世代の注目の若手による第一短篇集。 アメリカ在住のメキシコ移民三世、マ…

ジョン・ヴァーリイの〈八世界〉全短編第2集『さようなら、ロビンソン・クルーソー』を読んだ

■さようなら、ロビンソン・クルーソー (〈八世界〉全短編2) / ジョン・ヴァーリイ 時は夏。そしてピリは二度目の幼年期を迎えていた――冥王星での長い夏休みと少年期からの再卒業を鮮やかに描く表題作など、6編を収録。謎の超越知性により地球を追放された人…