BOOK

崩壊したアメリカの大地を少女とロボットが往くグラフィック・ノベル『エレクトリック・ステイト』

■エレクトリック・ステイト/シモン・ストーレンハーグ 1997年、無人機ドローンによる戦争で荒廃し、ニューロキャスターで接続された人びとの脳間意識によって未知なる段階に到達した世界が広がるアメリカ。10代の少女ミシェルと、おもちゃの黄色いロボット…

アストリアス『大統領閣下/グアテマラ伝説集』を読んだ(ラテンアメリカ文学)

■大統領閣下 グアテマラ伝説集/アストリアス 先日読んだイサベル・アジェンデの『精霊たちの家』がたいそう面白かったのでもう少しラテンアメリカ文学を読んでみるべえかと思い手にしたのがグアテマラの作家、ミゲル・アンヘル・アストリアスによる『大統領…

京極夏彦の『今昔百鬼拾遺 河童』を読んだ

■今昔百鬼拾遺 河童/京極夏彦 昭和29年、夏。複雑に蛇行する夷隅川水系に、次々と奇妙な水死体が浮かんだ。3体目発見の報せを受けた科学雑誌「稀譚月報」の記者・中禅寺敦子は、薔薇十字探偵社の益田が調査中の模造宝石事件との関連を探るべく現地に向かっ…

『ゲーム・オブ・スローンズ』原作者ジョージ・R・R・マーティンの『ナイトフライヤー』はエゲツナイSF短編集だったッ!?

■ナイトフライヤー/ジョージ・R・R・マーティン 最近のアメリカTVドラマで最大の話題となったのは『ゲーム・オブ・スローンズ(GOT)』最終章の公開でしょう。いやー『GOT』、オレも大好きなシリーズでしてねえ、一応シーズン7までは観てるんだが最終章であ…

ショーン・タン最新作のタイトルはなんと『セミ』?

■セミ/ショーン・タン 「絵本作家」といえばオレがまず最初に思い浮かべるのがこのショーン・タンである。まあ他の絵本作家を知らないという事もあるが(オイ)。絵本作家、ではあるが、ショーン・タンの描く作品は「大人の絵本」とでも呼ぶべきものである。…

京極夏彦の『今昔百鬼拾遺 鬼』を読んだ

■今昔百鬼拾遺 鬼/京極夏彦 「先祖代代、片倉家の女は殺される定めだとか。しかも、斬り殺されるんだと云う話でした」昭和29年3月、駒澤野球場周辺で発生した連続通り魔・「昭和の辻斬り事件」。七人目の被害者・片倉ハル子は自らの死を予見するような発言…

とっても素朴なカピバラ絵本『カピバラのせいかつ』ミケーラ・ファブリ著

■カピバラのせいかつ/ミケーラ・ファブリ オレはカピバラ好きである。カピバラのいる動物園は関東なら殆ど行き尽くしあまつさえリピートし、さらにカピバラ見たさに関西、四国まで出掛けたほどだ。次のターゲットは九州、ゆくゆくは台湾のカピバラ動物園を…

中国SF作家による短編集『郝景芳(ハオ・ジンファン)短篇集』を読んだ

■郝景芳(ハオ・ジンファン)短篇集/郝景芳 SFと詩的な視覚表現の融合。中国社会と現代都市の奇想天外な投影。ヒューゴー賞受賞「北京―折りたたみの都市」ほか、社会格差や高齢化、エネルギー資源、医療問題、都市生活者のストレスなど、中国社会を映しだす…

【お蔵出し】オレの45冊・SF小説篇

今回のエントリ『オレの45冊・SF小説篇』は2012年1月16日にはてなダイアリーの「下書き」に放り込んだまま7年間塩漬けにしていた記事である。 きっと当時「私の45冊」なんていうエントリが流行っていて、それに便乗しようとしたものなのだろう。タイトル通…

橋本治の『いつまでも若いと思うなよ』を読んでオレも老人になることについて考えた

■いつもまでも若いと思うなよ/橋本治 若さにしがみつき、老いはいつも他人事。どうして日本人は年を取るのが下手になったのだろうか――。バブル時の借金にあえぎ、過労で倒れて入院、数万人に 一人の難病患者となった作家が、自らの「貧・病・老」を赤裸々に…

三世代にわたる女たちの運命/『精霊たちの家』イサベル・アジェンデ (ラテンアメリカ文学)

■精霊たちの家/イサベル・アジェンデ クラーラは、不思議な予知能力をもっていた。ある日、緑の髪をたなびかせ人魚のように美しい姉のローサが毒殺され、その屍が密かに解剖されるのを目の当たりにし、以来九年間口を閉ざしてしまう。精霊たちが見守る館で…

ケン・リュウ最新SF短編集『生まれ変わり』を読んだ

■生まれ変わり/ケン・リュウ わたしは過去の自分を捨て、生まれ変わった…。地球に到来した異星の訪問者トウニン人と共生することになった人類は、大いなる代償と引きかえに、悪しき記憶を切除して新しい自分に「生まれ変わる」道を選ぶことが可能になった。…

ステファン・グラビンスキ『不気味な物語』を読んだ

■不気味な物語/ステファン・グラビンスキ 死と官能が纏繞するポーランドの奇譚12篇―― 生誕130年を迎え、中欧幻想文学を代表する作家として近年大きく評価が高まっているステファン・グラビンスキ。ポーランド随一の狂気的恐怖小説作家による単行本『不気味…

『J・G・バラード短編全集 第4巻』(だけ)を読んだ

■J・G・バラード短編全集(4) 下り坂カーレースにみたてたジョン・フィッツジェラルド・ケネディ暗殺事件/J・G・バラード 『結晶世界』『ハイ・ライズ』などの傑作群で、叙事的な文体で20世紀SFに独自の境地を拓いた鬼才の全短編を五巻に集成。第四巻には自…

橋本治最後の時評集『思いつきで世界は進む』を読んだ

■思いつきで世界は進む――「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと / 橋本治 今年1月末に亡くなった橋本治の時評集『思いつきで世界は進む――「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと』はPR誌「ちくま」の2014年7月号から2018年8月号までの巻頭随筆をまとめた…

スティーヴン・キングの新作ホラー小説『心霊電流』を読んだ

■心霊電流(上)(下) / スティーヴン・キング 途方もない悲しみが、若き牧師の心を引き裂いた―6歳の僕の前にあらわれたジェイコブス師。神を呪う説教を執り行ったのち、彼は町から出て行った。しかしその後も僕は、あの牧師と何度も再会することになる。かつ…

橋本治さんが亡くなった。

橋本治さんが亡くなった。亡くなったのは1月29日、70歳だったという。死因は肺炎ということだが、去年癌の摘出手術を受けていたのらしく、併発症ってことなんじゃないかな、と思う。以前から難病認定され、最近読んだ本も執筆ではなく口述だったので、「橋本…

超絶ハードSF、グレッグ・イーガンの『シルトの梯子』を読んだ

■シルトの梯子/グレッグ・イーガン 2万年後の遠未来。量子グラフ理論の研究者キャスが“ミモサ研究所”で行った実験は、まったく新たな時空を生み出してしまう―それから数百年後、人類はその生存圏を侵食し拡大し続ける新たな時空の脅威に直面し、生存圏の譲…

今年面白かった本とか音楽とかコミックとか

unsplash-logo Mahdiar Mahmoodi と言う訳で今日は「今年面白かった本とか音楽とかコミックとか」と題し、今年オレのブログで取りあげたそれぞれのモノについてつらつらと羅列していこうかともいます。 《目次》 今年面白かった音楽 ◎リー・ペリー関係のブロ…

ディーン・クーンツの『これほど昏い場所に』を読んだ

■これほど昏い場所に/ディーン・クーンツ “早く、早く死ななきゃならない”。海兵隊員の夫が、ナイフで自らの首を掻き切る前に書き遺した言葉。それは、FBI捜査官ジェーンの悪夢の始まりだった。調べを進めるうち明らかになる、全米の自殺率の異常な増加。夫…

デイヴィッド・ゴードンの『用心棒』を読んだ

■用心棒/デイヴィッド・ゴードン ジョー・ブロディーは異色の用心棒―ハーバード中退、元陸軍特殊部隊、愛読書はドストエフスキー。心優しいジョーだが、凄腕のその評判に偽りはない。ある晩、彼が勤務するストリップ・クラブをFBIが急襲する。理由も告げら…

『チェコSF短編小説集』を読んだ

■チェコSF短編小説集/ヤロスラフ・オルシャ・jr.編 二つの大戦、社会主義政権の樹立、プラハの春とチェコ事件、そしてビロード革命――。激動の歴史を背景に中欧の小国チェコで育まれてきたSF。ハクスリー、オーウェル以前に私家版で出版されたディストピア小…

ミハイル・ブルガーコフの戯曲『アダムとイヴ・至福郷』を読んだ

■アダムとイヴ・至福郷/ミハイル・ブルガーコフ 世界の対立が深まり、ついに毒ガスを使った全面戦争が勃発!死の町と化したレニングラードでは謎の光線を浴びて生き延びたアダムとイヴと光線を発明した科学者ら数人の人々が再会を果たしたが…(「アダムとイヴ…

最近読んだ椎名誠

■長さ一キロのアナコンダがシッポを噛まれたら / 椎名誠 長さ一キロのアナコンダがシッポを噛まれたら (角川文庫) 作者: 椎名誠 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2017/09/23 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 地下生活の考察と未来都市の姿、…

恒星間移民船で起こった密室大量殺人事件の謎を追え /『六つの航跡』

■六つの航跡(上)(下) / ムア・ラファティ 新しいクローンの体で蘇った6人が最初に目にしたのは、自らの他殺死体だった──。2000人分の冷凍睡眠者と500人分以上の人格データを乗せた恒星間移民船で、唯一目覚めていた乗組員6人が全員死亡。彼らは再生したもの…

最近読んだ本/『こうしてイギリスから熊がいなくなりました』『中二階』

■こうしてイギリスから熊がいなくなりました/ミック・ジャクソン これは、イギリスで絶滅してしまった熊に捧げる、大人のための寓話です。電灯もオイル・ランプもなかった時代、夜中に森を徘徊する悪魔だと恐れられた「精霊熊」。死者のための供物を食べた…

妄執と強迫観念に彩られたダークファンタジーの傑作/竜のグリオールに絵を描いた男

■竜のグリオールに絵を描いた男/ルーシャス・シェパード 全長1マイルにもおよぶ、巨大な竜グリオール。数千年前に魔法使いとの戦いに敗れた彼はもはや動けず、体は草木と土におおわれ川が流れ、その上には村ができている。しかし、周囲に住むひとびとは彼の…

"退職刑事ホッジズ"シリーズ3部作完結編にして最高傑作の登場/S・キング長編小説『任務の終り』

■任務の終り(上)(下)/スティーヴン・キング 6年前に暴走車を駆って大量殺人を犯した男、ブレイディは、いま脳神経科クリニックに入院していた。第二の事件を起こす直前で捕らえられたブレイディは、その際に脳に負った重傷による後遺症で、意思疎通も困難な…

人類滅亡5000年後、残された人々の未来を描く最終編『七人のイヴ III』

■七人のイヴ III / ニール・ステーヴンスン 月の無数の破片が落下する“ハード・レイン”により地球が滅亡し、それから5000年の月日がたった。その直前に宇宙に脱出して生き残った人類、「七人のイヴ」の子孫たちは、月が元あった軌道上に無数のハビタットや…

スティーブ・シャピロによるデヴィッド・ボウイ写真集

■Bowie / Steve Schapiro 10代の頃からこの年になるまで、長年に渡ってデヴィッド・ボウイのファンだった。2016年になったばかりのある日、この世を去ってしまったボウイだが、オレの部屋には今でもボウイのLPジャケットが何枚も飾ってある。 そんなボウイの…