貧しく汚らしくこすからいインド~『インドぢる』と『ぢるぢる旅行記』

■インドぢる / ねこぢる

インドぢる

引っ越しをしたとき、この際だからと読まなくなった本や漫画を結構な量処分したが、逆に「これだけは捨てられないな」と思った作家の本も幾つかあった。漫画家では、諸星大二郎花輪和一、そしてねこぢるの作品である。オレにとってねこぢるは、諸星や花輪と同等の、「もはやオンリーワンとしかいえないとてつもない鬼才」の一人だったのだ。

いわゆるガロ系作家であったねこぢるについての詳細や特徴、その魅力はここでは特に書かない。ただ、「突き抜けてしまった漫画家」であった、という事だけは言える。1990年ガロでデビュー、「にゃーこ」と「にゃっ太」という姉弟猫を主人公とした漫画を描いていた。1998年に自殺により他界。享年31歳。

その後夫であった特殊漫画家の山野一が「ねこぢるy」というペンネームでねこぢる世界を引き継ぐ漫画作品の数々を世に送り出す。山野にとって「ねこぢるy」の漫画は妻ねこぢるへの追悼の意もあったのだろう。

今回紹介する『インドぢる』は、そんな山野がかつて妻と訪れたインドの町を、妻との足跡を思い出しながら再び辿ってゆく、という紀行文になる。漫画作品も幾つか収められているが、基本的には文章が中心となる。

ねこぢるは存命中に、夫とのインド旅行を漫画化した『ぢるぢる旅行記』並びにネパール編を追補した『ぢるぢる旅行記・総集編』を刊行しているが、ねこぢるによるこのインド旅行記は、オレにとってのインドのイメージを決定付けるような強烈なイメージで溢れていた。

それはバックパッカー的ないわゆる貧乏旅行であり、観光としてのインドというよりも、インドのダメな部分も汚らしい部分も体験しながら、そのどうしようもない部分をどうしようもないものとして受け入れてゆく、そして楽しんでゆく、奇妙に魅力の溢れた作品だった。

山野も、ねこぢるも、ある意味一般社会から外れた部分にある感性と社会性でもって生きてきた人間であり、そういった人間たちによるインドという国への視線が独特だったのだ。それはねこぢるの人生観の延長線上にある世界としてのインドだった。

この『ぢるぢる旅行記』を読んで数十年してからオレはインド映画にハマることになるが、それによりインドという国や社会や文化に対してそれなりに認知する部分が増えたとしても、『ぢるぢる旅行記』のインドのリアルさはその認知を遥か超えた部分に存在していた。

この『インドぢる』自体は2003年に刊行されたものだが、今まで手にしなかったのは「亡くした妻との足跡を辿る紀行文」という内容からウェットで生臭いものを連想してしまい、手にするのを躊躇したからだった。だが、今回こうして読んでみると、特殊漫画家・山野一の脱力したキャラクターと脱力しきった旅行先での毎日の記録とが、奇妙に面白い紀行文として完成していた。

もちろん、文章の合間合間には、あたかもフラッシュバックのように、生前のねこぢるとのやりとりが挿入される。その多くは『ぢるぢる旅行記』で描かれていたことだ。こうして、ねこぢるのいた過去と、ねこぢるのいない現在とか交差することにより、山野の抱く今は亡き妻への感情がうっすらと透けてくる構成になっている。

しかし、やはり面白いのは、インド・ネパールにおける山野の自堕落な日々と、その山野が出会い慣れ親しむインド底辺層の人々の、なんとも言いようの無いどうしようもない生活の描写だ。それは、貧しく、汚らしく、そしてこすからいインドの情景だ。しかし山野はそんなインドを肯定も否定もせず、ただそういうものだと眺めつつ日々を過ごすのだ。

山野はかの地の安宿を長期滞留しつつ転々とするが、滞留期間が長い分現地人との交流も非常に密になる。密にはなりつつ、山野は彼らを愛することも突き放すこともしない。彼らから嫌な目にも遭い、彼らと共に愉快なひと時も過ごすが、山野にとってそれは粛々と過ぎ去ってゆくだけのものだ。ここに山野独特の諦観がある。それは、インドという国それ自体に底流する諦観でもあるような気がする。

貧しく、汚らしく、こすからいインド。それは決して楽園ではないが、唾棄すべき穢土と糾弾すべきものでもない。ただそうでしかないリアルを、ぐちゃぐちゃの生活感に塗れて生きてゆく。それは逞しさだの生命感だのといったものですらない。そうして生きざるを得ないから生きているだけだ。

だが、そういったぎりぎりの、剥き出しの生の中に、生の本質が垣間見えることもある。それは生きる事への強烈な希求心だ。貧しく、汚らしく、こすからいインドに、なぜか人が魅せられてしまうのは、そういった部分なのかもしれないと思いながらこの本を読んだ。

インドぢる

インドぢる

 
ぢるぢる旅行記 (総集編)

ぢるぢる旅行記 (総集編)

ねこぢる大全 上

ねこぢる大全 上

ねこぢる大全 下

ねこぢる大全 下

クマー!!ロシア製スーパーヒーロー映画『ガーディアンズ』の本質はクマにあった!?(のか!?)

ガーディアンズ (監督:サリク・アンドレアシアン 2017年ロシア映画

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冷戦期のソ連で遺伝子操作により超人となったまま姿を消していた者たちが、巨大な危機に立ち向かうため再び集結した……ッ!?というマーベルやDCも真っ青のロシア製のスーパーヒーロー・ムービー『ガーディアンズ』です!まずは4人の超人さんを紹介してみましょう!超人さん、いらっしゃ~い!

超音速で動き敵をぶった斬る剣の達人、ハン!

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念動力で石を操る賢者、レア!

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体を透明化することができる美女、クセニア!

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そしてクマった時はクマに変身しちゃうニクいヤツ、アルスス!!

「クマ~~~~ッ!!」

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そんな彼らの敵となるのが電子機器を思いのまま操る悪の科学者クラフト!

家電を操作する時にリモコンいらなくて便利だね。

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……という、X-MENもびっくり」「ていうかファンタスティック・フォーなスーパーヒーローたちが地球を守るために戦う映画、それがこの『ガーディアンズ』なんですね!いやあ、メッチャ面白そうだよねッ!?面白そう……じゃないっすか?(自身なさげに)

ストーリーは説明するまでも無いほど単純そのもの。冷戦下のソ連、国家の威信をかけて超人部隊を生み出した天才科学者クラトフが暴走し、自らも超人となり研究所を爆破して失踪、生み出された超人たちも散り散りとなる。そして50年後、ロシア崩壊を目論み破壊活動を繰り返すクラフトを倒す為、政府は超人たちを集結させ《ガーディアンズ》を結成するのだ!……でもなんで50年も待ってたのクラフトさん……?

なにしろこの作品、上映時間が89分と超絶的な短さのため、物語がかっ飛ばすかのようにポンポン進んでゆく!4人のヒーローが一人づつ集まってくるシーンなんざみんな何の逡巡も葛藤も無く「クラフト倒すの?行く行く行っちゃう!」と二つ返事!さて集まったら集まったで速攻の速さでクラフト退治に乗り出し、そして速攻でやられちゃう!3人のヒーローは拉致されちゃうんだがこれも速攻で助け出され、クラフトはクラフトで疾風の速さでモスクワを制圧、不気味な電波塔を建て「これでロシアはお終いなんだああ」と不敵に笑う!で、4人のヒーローは「あいつの居場所分かりやすいし」と懲りずにクラフト退治のリベンジマッチ!

……とまあこんな感じにテンポが速くて好感度高いわあ!どこぞのスーパーヒーロー映画みたいに2時間半ぐらい掛けてグジグジ悩んでグダグダ討論して時々青春したり愛を語ったり内輪揉めしたり挙句の果てに「善とはなんだあああ悪とはなんだあああ」とか始まっちゃったりするカッタりい展開が一切無いんですよ!この映画、あちこちで悪い評判も聞くけどオレは好きだなあ!大好きだなあ!オレ、『ガーディアンズ』の味方です(キリッ)。早くソフト出ないかなあ!すぐ買っちゃうぞ!そして何回も観ちゃうぞ!89分しかないからリピートに適してるじゃんか!あとヒーローたちのフィギュアも欲しいなあ!

それとこの映画の面白い所はヒーローたちがそれぞれかつてソ連国家の一部だったりロシア辺境の国から登場していることなんだよね。確かアルメニア(レア)、アゼルバイジャン(ハン)、シベリア(アルスス)、あと現ロシアのモスクワ(クセニア)からだったかな(うろ覚えなんで間違ってたらゴメン)。で、そんな彼らを統率するのが白人系ロシア人で、この辺の民族的構成は深い意味なんて何も無いと思うが(こんなアホアホ映画だし!)、顔付が個々に特徴があって面白かったんだよなあ。

そしてもうひとつ、この映画の見所だと思えるのは、(多分)ロシア製の兵器がいっぱい登場すること、それと、ソ連時代に建築されたと思われるいかにも共産国っぽい無意味にいかつくて巨大な廃墟や建造物が普通にドカーンと登場する所だな。なんかこう「奇界遺産」チックな面白さがあるんですよ。モスクワの街並みですらなんだか煤けていて味わい深かったなあ。ヒーローたちそれぞれのスーツや武器の造形も微妙に癖が強くて、そのあたりのデザインセンスもアメコミヒーローものには見られない部分が楽しかった。

そしてねえ、なによりクマに変身するアルススですよ!こいつ、上半身クマのビジュアルがインパクト強いんだけど、単に「クマ程度には強い」ってだけで、いやそれ確かに凄いけどそんなにスーパーなことなのか!?と思っちゃうし、さらに変身が進むと全身クマになるという驚くべき展開を見せるんだが、「いや、でも、クマだし!確かにクマ強いけど、でもクマだから!」と頭の中でモヤモヤとした奇怪な混乱が起こるんですよ!もちろんこのクマ化のビジュアルはCGですけど、最初見た時は「え、パディントン!?」とちょっと思ってしまったオレであった!しかし、この「クマ男アルスス」の時折見せるコミカルさがいいスパイスになっていて、物語がなおさら楽しかったよ! 


1/20(土)公開『ガーディアンズ』予告編

『火星の人』アンディー・ウィアーによる新作長編SF『アルテミス』

■アルテミス (上)(下) / アンディー・ウィアー

アルテミス(上) (ハヤカワ文庫SF) アルテミス(下) (ハヤカワ文庫SF)

人類初の月面都市アルテミス―直径500メートルのスペースに建造された5つのドームに2000人の住民が生活するこの都市で、合法/非合法の品物を運ぶポーターとして暮らす女性ジャズ・バシャラは、大物実業家のトロンドから謎の仕事の依頼を受ける。それは都市の未来を左右する陰謀へと繋がっていた…。『火星の人』で極限状態のサバイバルを描いた作者が、舞台を月に移してハリウッド映画さながらの展開で描く第二作。(上巻作品紹介)
ジャズがトロンドから依頼された仕事は、企業買収が絡んだ破壊工作だった。普段の運び屋仕事と違う内容に戸惑うジャズ。だが、彼女は破格の報酬に目がくらみ、仕事を引き受ける。溶接工を父にもち、自らも船外活動の心得があるジャズは、友人の凄腕科学者スヴォボダの助けを借り、ドーム外での死と隣り合わせの作業計画を練っていく。地球の6分の1の重力下での不可能ミッションを描く、傑作サスペンスSF。(下巻作品紹介)

マット・デイモン主演のサバイバルSF映画『オデッセイ』の原作、『火星の人』を書いたアンディー・ウィアーの新作長編SFがいよいよ発売だ。タイトルは『アルテミス』、今度の舞台は2000人の人々が暮らす月面ドームである。

時代は22世紀間近、月面ドーム「アルテミス」は地球の富裕層の観光地として建築され運営されていた。主人公ジャズはここで合法/非合法の"運び屋"を営む26歳の女性。ある日彼女はここで暮らす実業家トロンドからあるヤバイ仕事を請け負うことになる。それが後にアルテミス全てを巻き込む大パニックを生み出すとは知らずに。

というわけでアンディー・ウィアー期待の新作なんだが、これが『火星の人』と同等に若々しい筆致と軽いフットワークで描かれた、非常に心憎い傑作だった。

まず読ませるのが「月面で2000人の住人が暮らす」為に必要な、考え得るあらゆる可能なテクノロジーを列挙し応用し、さらにそこで働き生活する人々の社会生活・経済生活の在り方を現実的に考察し、それにより非常にリアルで迫真的な「月面生活」の様子を描き出していることだろう。この『アルテミス』を読んでいると、明日からでも月面で生活できるのではないかとすら思えてしまうほどだ。

さて物語はどうだろう。今作の主人公ジャズは”密輸稼業”という微妙にアンモラルな仕事に手を染めている女性だ。とはいえそれは悪事というよりも限りなくグレイに近い小遣い稼ぎに過ぎず、そしてそれは五月蠅い父親から自立するためどうしてもお金が必要だったからという理由がある。しかし物語が進むにつれ彼女は「限りなくブラックで危険な大仕事」に手を染めることになり、それにより月面ドーム「アルテミス」は大きな危機に至ってしまうことになるのだ。

『火星の人』の主人公マークが"火星有人探査船ミッションの隊員"というある意味知的エリートであり、アメリカの持つ不撓不屈の精神を代表するタフな精神性を持った男であったのと比べると、『アルテミス』のジャズは一般市民でありしかも"落ちこぼれ"であり、犯罪に手を出してしまう軽はずみな女性だ。エリートではなくパンクなのだ。しかし彼女がどうにも憎めないのは私腹を肥やす為ではなく生活に困窮しているが故の已むに已まれぬ行為であり、さらにその背後には自己実現への強い希求があるということだろう。これは『火星の人』と正反対のキャラクターを描くということの作者なりの挑戦でもあったのだろう。

しかし『アルテミス』には『火星の人』と共通する部分もある。『火星の人』マークが自らの持つあらゆる科学知識を総動員することによってサバイバルを成し得てゆく男だったように、『アルテミス』のジャズは月面世界で仕事し生活してしてゆくために得たあらゆる知識と技術を総動員してヤバイ仕事を、そしてそれが招いたアルテミスの危機を救う手段を考え抜き行動しようとするのだ。知識、技術、行動力、そして決して諦めない楽観性。これが『アルテミス』と『火星の人』の共通する部分だ。

こうして『アルテミス』は『火星の人』と差別化を図り新しい展開を見せながらも、作者ならではの前向きさという部分で共通し読んで安心できる優れたSF作として完成している。個人的に一つ難を上げると女性主人公を意識したのか訳文が時々「ですます調」になる部分だ。10代の少女ならまだしも26歳にもなる大人で、おまけにパンクな女性なのなら少々そぐわないのではないかと感じた。それはさておきこの作品も映画化決定というから、どんな作品になるのか今から楽しみである。

《アルテミス:文庫版》 

アルテミス(上) (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス(上) (ハヤカワ文庫SF)

 
アルテミス(下) (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス(下) (ハヤカワ文庫SF)

 

《アルテミス:Kindle版》

アルテミス 上 (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス 上 (ハヤカワ文庫SF)

 
アルテミス 下 (ハヤカワ文庫SF)

アルテミス 下 (ハヤカワ文庫SF)

 

《火星の人》  

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(上) (ハヤカワ文庫SF)

 
火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

火星の人〔新版〕(下) (ハヤカワ文庫SF)

 

《映画:オデッセイ》

 

「ニンテンドースイッチ」と「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」がやっと手に入った。

二つ同時入手。

ニンテンドースイッチ」と「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」がやっと手に入りました。いやー発売後暫く両機とも品薄&業者のプレ値攻撃で全然手に入らなかったんですが、去年の年末になったらいきなり入手しやすくなりましたね。そんな訳で今回は今更ながらですが両機のざっくりした印象などを書いてみたいと思います。

ニンテンドースイッチ

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「やっと手に入った」とはいえ実はこの【スイッチ】、自分では買ってないんですよ。オレの弟が甥っ子にクリスマスプレゼントで購入したのが、その甥っ子が既にスイッチ持っていたことが分かり宙に浮いていたのを、このオレが貰っちゃった、というわけなんですね。ラッキーでしたね。

で、触ってみるとさすがにオモチャとして・ガジェットとしての面白さに満ち溢れていて、流石任天堂だと思わされましたね(とはいえ過去機であるWii Uは奇抜過ぎてポテンシャル全然活かせてない気もしましたが)。ただ自分、携帯ゲーム機として持ち歩く気は全く無いんですよ。移動時は読書って決めているんで、ここは譲れないんです。

まず驚いたのはゲームソフトがROMカードだってことだなあ。「うわあPCエンジンだあ」とか思っちゃいましたよ。これどれだけの容量があるんだろ?(調べたら容量そのものよりも圧縮技術が優れているのでPS4などとも遜色ないクオリティのゲームデータが扱えるとのこと)

あとはソフトですかねー。これもよく言われているんですがサードパーティーがーというのと、基本的にオレ、マリオあたりの任天堂キャラ得意じゃないので、いくら評判よくとも遊んでみたいと思わないんですよ。じゃあなんでスイッチ欲しかったんだよ!と言われるとアレなんですが、いや、『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』やってみたかったじゃないですか!

で、このゼルダで遊んでるんですが、もうこれ鬼のように凄まじい完成度のゲームですね……。「和ゲーは洋ゲーに押されてー」なんて話は少なくともこのゼルダでは有り得ないです。ゲームの面白さもそうですが、痒い所に手が届くかのような細かなトリートメント具合が、快適なんですよね。ただこのゼルダの他に何かやりたいゲームはあるかというと、うーん……『ベヨネッタ3』なのかッ!? 

Nintendo Switch Joy-Con (L) / (R) グレー

Nintendo Switch Joy-Con (L) / (R) グレー

 
 ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン

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 オレが本格的にゲームやりだしたのはスーファミからでしたから(しかも30代で!)、「スーファミの懐かしのゲームがオールインワンになってプレイできる!」という【ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン】の発売のニュースを聞いた時は全オレがどよめきましたね。ファミコンミニの時は全く動じなかったんですけどね。

ただねー、懐ゲー懐ゲーなんで、今やって果たして面白いのかなあとは思ってたんですよ。終わってないPS4やXboxOneゲームも大量にありましたし、これはこれで7000円ぐらいしますしね。ところが、アマゾンクーポンが貯まってたので、これじゃあ!とばかりに安価に手に入れてしまったんですね。

でまあ触ってみたんですが、実際のところ収録ゲームの7割ぐらいはやったことない&興味の無いソフトで、結局昔スーファミで遊んだゲームばかりやってましたね。まずなんと言っても『魂斗羅スピリッツ』ですよ!いやあアレ、ムズかったなあ!そしてスーファミミニで改めてやってみたけど、昔からさらに腕が落ちて全然進まないなあ!『スターフォックス』もやってみたけど腕落ちまくってて全くダメだわこりゃ!

実は今回のスーファミミニ、途中セーブが可能と聞いて「以前クリアできてなかったソフトの再挑戦」を目論んでたんですが、このセーブ方法が若干煩雑で、使い勝手悪いんですよ。ボタン一個でチョチョイとできると思ってたんだがなあ。

そんな中、今やっても十分楽しめたのが『F-ZERO』だったんですよ。いやこれレースゲームの究極形態だったのかもしれんな。というか、スーファミで遊んでいた頃よりも数々のレースゲームをこなしていたせいで、なんか微妙に腕が上がってる!?あとやっぱり『ゼルダの伝説 神々のトライフォース』だよな!あれこそ神ゲーだよ神ゲー!今遊んでも全く古びてないばかりかスーファミで出来ることを全てやっている最高のゲームだよな!まあしかし今やるとやっぱりムズいけど! 

《収録ゲーム一覧》

スーパーマリオワールドF-ZERO超魔界村ゼルダの伝説 神々のトライフォース、スーパーフォーメーションサッカー魂斗羅スピリッツスーパーマリオカートパネルでポンスーパーマリオ ヨッシーアイランドがんばれゴエモン ゆき姫救出絵巻、スーパーマリオRPGファイナルファンタジーⅥ、スターフォックス2、スターフォックス聖剣伝説2、ロックマンⅩ、ファイアーエムブレム 紋章の謎スーパーメトロイドスーパードンキーコングスーパーストリートファイターII ザ ニューチャレンジャーズ、星のカービィ スーパーデラックス

個人的ボリウッド・カルト・ムービー11選!

先日ポストした記事『英タイムアウト誌の選ぶボリウッド・ベスト100作品を全て観て全ての感想を書いた。』が結構皆さんに楽しんで貰えたようなので何か便乗企画でも捏造しようかと考えたんですけどね。 

最初は個人的な『ボリウッドベスト10!』なんてェ記事を書こうかとも思ったんですが、思いつく作品はというとシャー・ルク・カーン主演映画と日本公開インド映画が大半で、なーんか面白みに欠ける。これだったらもっとインド映画に詳しい方にやってもらったほうがいい。

それで思いついたのがボリウッド・カルト・ムービー特集』、オレがこれまで観たボリウッド映画の中から、なーんだかちょっと変わった作品、クセのある作品、灰汁の強い作品を幾つかピックアップしてみたいと思ったんですよ。まあ書いてる本人も変わりもんなんで、このぐらいの企画が順当なんじゃないかと。

例によってピックアップするのはボリウッド作品限定です(ひょっとして違うの混じってたらごめんなさい)。実の所、『カルト』とよぶに相応しい作品は南インド映画のほうが断然多い気がするんですが、こちらのほうは全く詳しくないんでやれません(だから、南インド映画に詳しい人、誰かやってよー)。それとあくまでオレの観測範囲内の作品だけですのでここに挙げたのよりもっとスゲエカルトボリウッドムービーもきっとあると思います。だからそこのインド映画通のアナタ、もしそんな映画を知っていたら是非教えてくださいよー。

というわけでいつものようにダラダラと行ってみましょう!

 

■Satyam Shivam Sundaram (監督:ラージ・カプール 1978年インド映画)

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ボリウッド・カルト・ムービー」と言ったらオレはまずこの作品を真っ先に思い浮かべます。というかこの作品を再び紹介したいからこの特集を考えたほどなんですよ。物語は「顔に火傷跡がある娘とそれと知らずに恋してしまった男」なんですが、なんとこの男、娘と交際を重ね結婚するまで顔に火傷跡があることを知らなかった!?そして結婚式当日にそれを知って男は気が狂い、「お前は本当の俺の恋人じゃない!」と喚き散らした挙句、”顔に火傷跡なんかない本当の恋人”を探して彷徨い歩くんです!狂ってるのう!狂ってるのう!それだけじゃなく、なんとクライマックスでは円谷プロかと思っちゃうような大天変地異まで起っちゃう!?全編を通し江戸川乱歩作品みたいなおどろおどろしさと幻想性が漂い、「ボリウッド・カルト・ムービー」の名にし負う超怪作であり名作でもある必見の作品という事ができるでしょう。

■Bandit Queen (女盗賊プーラン)/ (監督:シェカール・カプール 1994年イギリス/インド映画)

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この作品、1963年に生まれ、山賊の女首領になり様々な略奪と殺戮を繰り返したプーラン・デーヴィーという女性の実話ドラマなんですよ。映画では描かれませんがこのプーラン・デーヴィー、逮捕された後に政界に進出し活躍しつつも2001年に38歳で暗殺されてしまうんですね。文字通り数奇な運命を歩んだ女性の物語なんですが、カースト最低位に生まれた彼女が11歳で幼児婚させられたり差別や虐待や性的暴行を受けたりされる様が実に生々しく描かれているんですね。観ていて「インド映画でここまで描いちゃうんだ!?」とびっくりしたぐらいです(イギリス資本が入っていたから可能だったのでしょう)。しかも監督はその後イギリス映画『エリザベス』を撮ることになるシェカール・カプール なんですね。

■Quick Gun Murugan (監督:シャシャンカ・ゴーシュ 2009年インド映画)

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インド映画なのに西部劇、という段階でよく分からないんですが、主人公が一度あの世に行って蘇ってしまう!?というさらに奇妙奇天烈な設定で、さらには「ノン・ベジタリアンを世にはびこらせようとするマフィアと戦うベジタリアンの戦士」となる、全くもって意味不明な展開を見せる作品なんですね。それだけじゃなく、映画全編がティム・バートン的な怪しげな美術センスで統一され、主人公に至っては顔が髭の生えたパタリロ、という気の遠くなるよなキャラクターなんですよ。もはやボリウッド・カルト・ムービーの極北を行くひたすら唖然とさせられる作品で、輸入DVDを見つけたら即買いでしょう!?

■karan Arjun (監督:ラーケーシュ・ローシャン 1995年インド映画)

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シャー・ルク・カーンとサルマーン・カーンの共演作!というからどんなゴージャスな作品かと思ったらなんと血と殺戮の復讐劇で、これがもう【ボンクラ映画】と太鼓判を押したくなるようなやりたい放題の大怪作!チープな映像は往年の香港映画のようだし血生臭いアクションシーンはタミル映画みたいだし狂ったように何度も繰り返されるフラッシュバックシーンはまるでヨーロッパの古典ホラー!?しかし暗い土俗の匂いのするカーリー神への祈りや輪廻転生テーマはまさしくインドで、これらがどろどろぐぢゃぐぢゃと混じり合いながら最後は家族愛でシレッとまとめられちゃうなんてまさにカオス!

■Andaz Apna Apna (監督:ラージクマール・サントーシー 1994年インド映画)

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そしてこちらはアーミル・カーンとサルマーン・カーンの夢の共演作!?なんですが、やっぱりこれもとんでもない作品でした。コメディ作品なんですが徹頭徹尾ひたすらしょーもないナンセンスなアホアホの限りを尽くし、これはインドのドリフなのか!?はたまた俺たちひょうきん族なのか!?そうなのか!?とTVの前で仁王立ちしそうになってしまいます。特に二人の怪しげな七変化の様はあたかもタケちゃんマンのたけしとさんまのよう……。インド映画名物歌と踊りのシーンも情緒もへったくれもないタテノリひたすら悪ふざけの限りを尽くしたこの作品、主演の二人は20代だったようですが、こんな映画には二度と出演しないだろうことを考えるとなおさら貴重なカルト作です!

■Kati Patang (監督:シャクティ・サーマンタ 1971年インド映画)

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原作がアメリカのミステリ小説家ウィリアム・アイリッシュによる『死者との結婚』という作品で、物語それ自体は確かにミステリとして進行しそれなりの結末を迎えるのですが、この作品を「カルト」と呼びたいのはその冒頭30分のとんでもない展開なんです!まず主人公は結婚式のその日に元カレの手紙によろめいてその場で結婚を破棄し元カレの元へ向かいますが、その元カレは別の女とベッドでムフフしていて、嘆きに塗れつつ家に帰ると叔父が死んでいて主人公は孤児になり、もうイヤ!と電車に乗ると今度は列車脱線の大事故に遭い、命からがらタクシーに乗るとなんと運転手に襲われ、そんな彼女を助けたのは彼女が結婚を破棄したその男だった!?……という不幸の絨毯爆撃みたいな凄まじい展開が冒頭たった30分で起こっちゃうんですよ!?この唖然とするスピーディーな地獄落ちの描写はまさに「カルト」と言えるでしょう!

■Hum Aapke Hain Koun..!(監督:スーラジ・バルジャーティヤ 1994年インド映画)

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インド映画の名作中の名作と謳われる大人気作なんですが、普通の日本人が真に受けてうっかり観てしまうととんでもない目に遭わされます。どういう内容なのかというと、全部で3時間以上あるインドらしい長い映画なんですが、その3分の2ぐらいは殆ど結婚式シーンという映画なんですよ。つまり上映時間3時間のうち2時間ぐらいが結婚式シーンということなんですね!いくら結婚式大好きなインド人とはいえやり過ぎなんだよッ!!そしてさらにそこにインド映画十八番の歌と踊りがこれでもかこれでもかと盛り込まれているんですが、通常物語の間に歌と踊りが挿入されるのを、この映画は歌と踊りが延々と続き、その合間に思い出したかのように物語が挟まれるという凄まじい徹底ぶりなんです!というか物語なんて殆ど無い!!

■Koyla (コイラ〜愛と復讐の炎)(監督:ラーケーシュ・ローシャン 1997年インド映画)

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はい。先程紹介した『karan Arjun』のラーケーシュ・ローシャン監督が1995年に撮った『karan Arjun』に負けないほどにとんでもなくやりたい放題な映画、それがこの『Koyla (コイラ〜愛と復讐の炎)』です。物語は因業な地主にかどわかされた娘をシャールク演じる主人公が救う!というものなんですが、なんかもー全篇ツッコミ所満載で観ていてツッコミ疲れしてしまうほどのめくるめく展開を楽しむことができるんです。その量はあまりに膨大でここでは書き切れませんので記事のリンクを確認してください。ただ一つ言えるのは、この作品、実はスタローン映画『ランボー』オマージュの作品だった!?という点でありましょう。ラストの炎に燃えるシャールクの疾走シーンはインド・アクション映画の語り草となっております(ホントかよ)。

■Gadar: Ek Prem Katha (監督:アニル・シャルマー 2001年インド映画)

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分断されたインド・パキスタンの住民同士の憎しみと争いを描いた作品なんですが、なんかもう全編に渡って血管ブチ切れそうなというか既にブチ切れて全身血塗れになってるんじゃないかと思わせるほどのとんでもないテンションで描かれるアクション映画なんですな。この映画作った皆さんは全員血圧の心配をした方がいいです。テンション高めですから冒頭のインド行き列車の虐殺シーンはもはやホラーだろ!?と思っちゃうほどの死体と流血に塗れまくっており、中盤のドラマは出てくる人間誰もが大嵐のように感情の荒れ狂う展開を見せ、そしてクライマックスではパキスタンに潜入した主人公がこれでもかこれでもかとパキスタン兵を大量虐殺しております!いいのかこれ!?

■Gumnaam (監督:ラジャ・ナワテ 1965年インド映画) 

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アガサ・クリスティが執筆した超有名な古典ミステリ小説『そして誰もいなくなった』を原作としたインド映画なんですが、まあ確かに孤島に辿り着いた人々が一人また一人と殺されてゆくのは原作通りなんですけどね。なんとこの作品、歌って踊ってばかりいて全然人が死にません!冒頭の殺人以外は、映画が始まって50分ぐらい経ってからやっと一人殺される程なんです。映画自体は2時間半あるんですけどね。で、殺されたと思ったらまた歌と踊りです!映画では10曲のソングシーンがあり、実際は歌だけのシーンのほうが多いのですが、絶海の孤島に訳も分からず取り残され、謎の殺人者が次々と人を殺し続けているという状況なのに、その合間に歌って踊ってって、みんないったいどういう神経してるんだ!?

■Anjaam (地獄曼陀羅 アシュラ) (監督:ラーフル・ラワィル 1994年インド映画)

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今では「キング」の名で親しまれ絶大な人気を誇る大スター、シャー・ルク・カーンがサイコなストーカーとなって一人の美女を地獄に突き落とす!というサスペンス作なんですが、いやもうこのシャールクがいやらしくていやらしくて、デビュー間も無い頃とは言え「なんでこんな作品に……」とは思わされますが、それだけではこの作品を「カルト」とは呼べません。この作品をカルトたらしめているのは、ただでさえ日本でDVDリリースの少ないインド映画にもかかわらずこんな映画がDVD化されていること、そのタイトルが『地獄曼荼羅 アシュラ』とかいう相当おどろおどろしい邦題になっていることなんですね。日本版ジャケットなんてこんなですよ!?

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メーカーさん、他にもっとソフト化したほうがいいインド映画があっただろうによう……。